皮膚は最大面積の臓器ですから、包囲網をち密に設計しなければなりません。一日中裸でいても夜に干からびている人はいませんし、一流水泳選手は、毎日プールの中にいて練習に明け暮れても、練習後パンパンに膨れ上がってしまう選手もいません。では、どうやって防御という「バリア」を作っているのでしょうか?
皮膚のバリア機能は、一つではなくいくつもの仕組みで担っています。まずは、細胞がいくつも積み重なることで簡単には侵入や漏出をしないようにしています。細胞が集まることで強みを発揮しているんですね。(図参照)
そして、角層の間にはそれぞれ膜が存在し、たとえ細菌などの不審者が侵入してしまった場合でも簡単には地下に侵入できないようになっています。もちろんSECOMや警察のような役割を担う細胞(ランゲルハンス細胞といい、免疫細胞です)もいて、不審者を見つけると警報を鳴らし捕まえるシステムがしっかり出来上がっているんです。皮膚は面積が広いので、特に機能が複雑で卓越していると思います。この辺りは意外にクローズアップされませんが、非常に大切なシステムです。
とはいえ、防御の主役は細胞間脂質という油です。これは皮膚の一番外側の角質層の中にあるので、外側からや中側からの、最初で最後の砦です。不審者の侵入を防ぎ、大切な水の蒸発も防いでいます。では、細胞間脂質って?最近ではセラミドと言う言葉で細胞間脂質を説明している場合が多いように思います。そもそも細胞間・脂質 とは、角質細胞と角質細胞の間にある油脂のことを表現しています。皮膚は前述したように細胞が積み重なって集まった組織ですが、どんなに細胞同士がギューギューに集まってもすきまが出来てしまいます。そのすきまは防御としては許されない甘さなので、何とかきっちり埋める必要があるわけです。
では、細胞間脂質の脂質はどんな油なのでしょうか?サラダ油のようにサラサラしていたらすぐに流れ出てしまいます。ココナッツオイルはどうでしょうか?常温でざらってしてトロッとしていますが、これでもまだまだ不十分です。実際には、固体に近い固さで、常温では流れ出ず、皮膚の温度の35℃でもまだまだ固い状態を維持できる油脂になっています。このような固さを維持し、でも角層のために水分を保持し肌の滑らかさを出すには、特殊な構造である必要があります。ただのカチンコチンでは肌の滑らかさは表現できません。